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広島高等裁判所 平成7年(う)140号 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役一年一〇月に処する。

原審における未決勾留日数中、右刑期に満つるまでの分をその刑に算入する。

押収してある覚せい剤結晶粉末一袋(当審平成七年押第一九号の1)を没収する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人鶴敍作成の控訴趣意書及び被告人作成の「被告人陳述書」と題する書面(ただし、弁護人は、同陳述書中、第五の六、第五の七の項を除いて陳述し、右各書面中、未決勾留日数に関する部分は量刑不当を主張するものである旨釈明した。)に、これに対する答弁は、検察官上野富司作成の答弁書に各記載されているとおりであるから、これらを引用する。

第一  論旨は要するに、原判決は、被告人がAと共謀の上、平成六年二月二五日ころ静岡県伊東市《番地略》の同人方において、原判示覚せい剤結晶粉末約八・〇六七グラム(以下、本件覚せい剤という。)をみだりに所持したと認定しているが、原判決が挙示するA及び被告人の妻B子(以下、B子という。)の各原審証言は信用できず、また、本件事実関係の下においてはAとの共謀による右覚せい剤の共同所持は成立しないから、右認定をした原判決には事実誤認がある、というのである。

そこで、所論にかんがみ、原裁判所が取り調べた証拠及び証拠物を調査し、当審における事実取調べの結果をも加えて検討する。

一  まず、所論は、A及びB子の各原審証言の信用性がない旨主張するが、以下のとおり、この点は、原判決も認定するとおり、右両名の各原審証言は信用することができるから、右所論は採るを得ない。すなわち、

1  Aは、原審公判廷において、要旨次のとおり証言する。すなわち、Aは、服役中に被告人と知り合い、被告人に対し覚せい剤が必要なときは連絡をもらえば手に入る旨話していたところ、平成五年四月出所した後の同年秋ころ被告人から電話で覚せい剤を購入したい旨言われたが、このときは断ったものの、その後も同旨の申込みが何度かあり、平成六年一月末か、二月初めころ、被告人から電話で、覚せい剤一〇グラムの購入方の申込みを受けてこれを引き受け、値段が一五万円位である旨伝えると、被告人が送金する旨言うので、伊豆信用金庫宇佐美支店のA名義の預金口座番号を被告人に教えたこと、同年二月七日被告人から同口座に一五万円の振込み送金がありその旨の電話連絡もあったこと、Aは、知り合いのC某から覚せい剤を入手したとき同人に代金を払うため、送金を受けた右金を引き下ろして手許に所持していて、同月二四日の午後四時から五時ころ、右Cから覚せい剤約一〇グラムを代金一五万円で手に入れたこと、その後、同日午後七時過ぎころ被告人に対し覚せい剤が手に入ったので、自己使用のための分を少し除いた覚せい剤をすぐに送る旨電話で連絡したこと、これに対し被告人が「急いで送ってくれ。」と返事したので、Aは、宅急便で送ろうと思ったが、量的に少ないので、封筒でも大丈夫だと思い直し、翌二五日(金曜日)原判示自宅において、ちり紙に包んだ右覚せい剤(本件覚せい剤)等を便箋を使ってさらに包んでセロハンテープで止めて封筒に入れ、同封筒を糊付けして封緘し、かつ、Aが郵送したと被告人の妻のB子に分からないように、同封筒の表面には宛先として「広島県福山市《番地略》甲野太郎様」と、その裏面に「二月二四日」の日付と、差出人として自分の名前でなく「熱海市《番地略》 乙山釣具店」と各記載し、被告人の趣旨に沿うように速達にして、同日午前五時ころ郵便ポストに投函して郵送したこと、さらにAは、その直後ころ被告人に対し電話で「速達で送ったので、明日か、遅くとも明後日には着くと思う。」旨連絡したところ、被告人が「それじゃ明日待ってるから。」と言ったこと、その後、Aは、同月二六日、二七日被告人から同封筒が届かない旨の電話連絡を何回か受けたものの、被告人が右封筒を受け取っていながら殊更受け取っていないと言っているのではないかと疑いを持ち、同電話の際「もう送るのは駄目だ。もし急ぐんだったら取りに来てくれ。」と被告人に伝えたこと、そこで、被告人が同月八日(月曜日)Aの店(劇場)がある熱海に出向いて来て、右届いていないことにつき話し合った結果、Aは、被告人が本当に右封筒を受け取っていないと分かったので、右届いていないことにつき自分にも責任があり、また、被告人が出向いて来る位に覚せい剤を欲していると思い、改めて、自分の責任で覚せい剤約一〇グラム(本件覚せい剤とは別のもの)を手に入れ、これを土産の入った紙袋の中に入れ、被告人が同日帰る際に被告人に対し「入れとくからね。」と言って同紙袋を渡したこと、その後、同年三月一一日被告人からの右覚せい剤の代金として一四万円がA名義の前記口座に振込み送金されたこと、その後、Aは、同月一九日B子から「Aさん、あんた酷いことしてくれたね。私はあんたに覚せい剤の付合いだけはしてくれるなということを念押しした。それを破って、今、茶封筒の中にがさがさするものを私はここに持っている。どうしてくれる。」と言われたので、真実は本件覚せい剤を送ったのに、B子に対しては「覚えがない。」と答え、その後、被告人と電話で連絡を取り、被告人に対し「甲野さん、冗談じゃない。やっぱり奥さんが持ってたらしいよ。」と話したところ、被告人が「そんな馬鹿なことはない。」と言ったこと、その後、被告人は、B子と話してその点を確認してAの右話が真実と分かり、Aに電話したが、その際に、Aは、被告人に対し、本件覚せい剤がAから送ってきたものじゃない形にしてくれと頼んだところ、被告人が「何とかする。」と言ってその旨承知したこと、その後、Aは、B子からの電話連絡で、このことを警察沙汰にしないためには被告人が福山の町を出ること、二人でやったことだから二人で五〇万ずつの合計一〇〇万円を渡すことを要求された上、「(被告人が)今熱海に向かっているからよく相談してみてくれ。」と言われたこと、Aは、同月二一日午前一時二〇分ころ熱海着の列車で来た被告人から、被告人ら夫婦が世話になった人のところに行ってその人を通じてB子をなだめてもらい、B子に覚せい剤を捨てさせることを頼む旨の話を聞いたりしたこと、被告人は、Aが逮捕された同月二九日の夕方まで熱海に滞在した後、東京に行ったこと、なお、被告人から送金を受けた前記一五万円及び一四万円については、被告人に渡したブランド商品の代金とか、被告人にこれからブランド商品を渡す前受金とかではないことなどを証言している。このように、被告人から申し込まれ承諾して本件覚せい剤を被告人宛てに送付したという経緯やその後の経過事実に関するAの右原審証言は、その内容が具体的、かつ合理的であって、しかも、証拠物である封筒の記載等やB子の後記原審証言とも大筋において符合しており、その信用性を十分肯認することができるといえる。

所論は、Aの右原審証言は、被告人の妻B子が前記封筒を警察署に提出したことに対し怒りを感じ、また、B子から金員を要求されるに至ったことについて被告人に対しても不満を持ち、Aが被告人に対し一方的に本件覚せい剤を送り付けたのに、被告人がAに対し覚せい剤の購入方を求めたとして、自己の刑責を軽くしようとしており、また、本件覚せい剤のことが発覚した点についてその入手先に対する自己の弁解を考え、これらのことから虚偽の証言をしているものである旨主張する。なるほど、Aが被告人側の事情により本件覚せい剤が捜査機関に発覚した点につき腹を立てたであろうことは容易に推測でき、また、B子がAに対し金員を要求したことはB子も同旨の原審証言をしていることなどに照らすと、その事実が認められるが、しかし、これらの事情をもってしても、被告人から購入を求められた点に関するAの前記原審証言が前述のとおりその信用性を十分肯認することができる内容であることを排斥するに足る事情であるとは認められない。また、A自身は、本件も含めた罪により平成六年六月三〇日懲役二年四月に処せられ、その後の同年一〇月六日の原審公判期日において、本件に関し自己の刑事責任があることを自認した前述のとおりの原審証言をしているのであり、その証言において、自己の刑責を軽減しようと殊更に被告人に刑責を負わせようとする必要はないこと、その他被告人の主張する諸点を被告人のいう関係証拠を踏まえて仔細に検討してみても、Aの前記原審証言の信用性に疑いを抱かせる事情があるとは認められないことに徴すると、所論は採ることができない。

2  また、B子は、原審公判廷において、要旨次のとおり証言している。すなわち、B子は、平成六年二月二六日ころ広島県福山市曙町内の被告人の事務所の郵便受けに投げ込まれ、土間に落ちていた前記封筒を見つけ、被告人に渡さず、バッグに入れて自分が経営するスナック「丙川」にこれを持っていき置いたままにしてそのことを忘れていたこと、しかし、同年三月一六、七日ころ風呂に入っていた被告人の青沁みになっていた注射痕を見た際、前記封筒のことを思い出したが、右封筒のことを被告人に尋ねることなく、「あんた、また変なことしょうるな。」などと覚せい剤使用を問い質すと、被告人がこれを否定したりするので、喧嘩となったこと、そのときB子は、被告人が覚せい剤をやっているように思うので検挙して欲しい旨福山東警察署に電話をかけたところ、被告人が裸足で家から飛び出て行ってしまったので、同月一九日ころ前記封筒を知合いの服部弁護士のところに持って行き相談しようとしたが、同弁護士が不在であったため、結局、福山東警察署に提出し、警察官立会いの下で同封筒を開封しその中身を確認して本件覚せい剤が発見されたこと、B子は同日ころAに電話し「Aさん。あの中身は何じゃったん。人を騙すのもええかげんにしてくれ。」と怒ったこと、その後、B子は、帰宅した被告人に対し、大量の覚せい剤などをAから送ってもらったんだろうと話した際、被告人が「三回ほど郵便局に行って尋ねたが、もう配達した後だった。何秒かの差じゃったのー。」「何処にあるのか。」と言ったので、同警察署に届けてあることを言わず、服部弁護士のところにある旨答え、以前から覚せい剤仲間が訪ねて来たりしていて苦労しており、また、子供に被告人の捕まるところを見せたくなかったので、「ええ加減にしなさい。福山を出て行きなさい。」と言うと、被告人が「それはしょうがない。お前の言うとおりにするわ。」と返事して家を出て行ったこと、その後の被告人からの電話でも、被告人が前記封筒が何処にあるか気にしていたこと、被告人が捕まって以降も覚せい剤を譲ってくれとの電話が被告人方にあったこと、なお、本件についての被告人に対する気持ちとして早くきれいになって真面目になって欲しいと思う旨証言している。

このような前記封筒の被告人の事務所に到着した状況、その後の被告人及びAの言動等に関するB子の原審証言は、その内容が具体的、かつ真実味があるものであることなどに照らすと、その信用性を十分肯認することができ、前記封筒を見つけた後直ちに開披もせず、また被告人に対し詰問もしなかったという証言は、封筒の外形等に照らすと、被告人の覚せい剤使用に苦労させられていたという証言と所論のいう内容的に矛盾するものであるとまではいえず、また、覚せい剤使用の注射痕を見付けて夫婦喧嘩になった証言も特段不自然なものではなく、B子が被告人に覚せい剤との係わりを断ち切らせ真に更正を願う気持ちから敢えて被告人に不利な事実を自己の感情を交えて証言していると認められることなどに徴すると、B子の前記原審証言の信用性を否定する所論は採るを得ない。

3  これに反し、被告人の原審及び当審における各供述中、被告人がAに送った金は同人に入手方を頼んだブランド商品の代金であるなどとの弁解は、その商品を具体的に決めた訳でないのに送金したというものであって、それ自体不自然であること、本件覚せい剤はAがC某から安価に手に入れて被告人に対し一方的に送り付けてきたのであるという所論に沿い右認定に反する弁解も、A及びB子の前記各原審証言を含む関係証拠及びこれによって認められる事実関係に対比して措信し難い。

二  次に、所論は、被告人は、Aが本件覚せい剤を入手した取引相手と面識がなく、その取引の場所、状況、量なども全く知らず、また、本件所持の場所である伊東市内の原判示A方に行ったこともないことなどを挙げて、被告人には、本件覚せい剤に対する実際の支配がなく、Aとの共謀による共同所持が成立しないから、原判決には事実誤認がある旨主張する。

そこで、検討するに、原審記録によれば、本件公訴事実は、「被告人は、Aと共謀の上、みだりに、平成六年二月二五日ころ、静岡県伊東市《番地略》右A方において、フェニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤結晶粉末約八・〇六七グラム及び大麻草約〇・三九七グラムを所持した。」というものであるところ、原判決は、罪となるべき事実として「被告人は、Aと共謀のうえ、平成六年二月二五日頃、静岡県伊東市《番地略》右A方において、フェニルメチルアミノプロパンを含有する覚せい剤結晶粉末約八・〇六七グラム(平成六年押第二三号の1はその鑑定残量)をみだりに所持した。」と認定、判示し、「事実認定の補足説明」の項において、概ねA及びB子の各原審証言に沿う事実を認定した上、「この事実関係によれば、少なくとも、Aにおいて、あらかじめ被告人の意を受け、同人から送付された金員によって本件覚せい剤結晶粉末を入手した時点において、右覚せい剤結晶粉末につき、Aと被告人との共謀による共同所持の状態が成立したものと認定することができる。」と認定、判示し、なお、大麻草についての共謀による共同所持の点は認めることは相当でない旨認定、判示している。

ところで、覚せい剤取締法にいう「所持」とは、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為」であり(最高裁昭和三〇年一二月二一日大法廷判決刑集九巻一四号二九四六頁、同昭和三三年二月一一日第三小法廷決定裁判集一二三号二二三頁)、所持の態様としては他人と共同して所持する場合もあり、この共同所持は二人以上の者がそれぞれ意思を通じ合って覚せい剤を支配し得べき状態に置くというものもあるところ、本件についてみるに、A及びB子の前記各原審証言によって認められる事実関係によれば、なるほど、A子は、被告人から本件覚せい剤の購入申込みを受け、被告人から予め受取った代金をC某から覚せい剤を購入する資金に充てているが、しかし、Aの原審証言によっても、所論指摘のとおり、被告人がAの仕入先である右C某と面識がある訳でもなく、また、Aの本件覚せい剤の仕入れ取引につきその相手、代金、量などについて被告人がAから知らされていた訳でもなく、右仕入れ取引については専らAの責任と計算においてしているのであって、被告人はAから単に覚せい剤を入手できる旨知らされていたに過ぎず、Aから本件覚せい剤の購入先を斡旋してもらうような形態でなく、また、Aを代理人にしてCから買い受けてこれを交付してもらう形態でもなく、Aから本件覚せい剤の転売を受けるという譲受けの形態であると認められるのであって、実際にも本件覚せい剤は、Aが右仕入れた後自己の使用分を抜き取った残りの覚せい剤を前述のとおり包んで封筒に入れ被告人に転売するものとして特定して郵送に付しているのであるから、Aとの間に特殊な身分関係があるなどの事情もない本件においては、原判決が認定するように、Aにおいて覚せい剤を入手した時点あるいは原判示A方という場所において、既にAと意思を通じ合って、自らの行為として、本件覚せい剤を所持する、換言すれば、実力的支配し得べき状態になったこと、また、その認識があったことを認めることはできない。

そうすると、被告人に対しAとの共謀による本件覚せい剤の共同所持が成立するとした原判決には事実誤認があると認めざるを得ない。論旨は理由がある。したがって、その余の弁護人の論旨を判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。

第二  よって、刑訴法三九七条一項、三八二条により、原判決を破棄する。

そして、原審において検察官が予備的に後記認定と同旨の訴因を追加していることについてみるに、本件において、共謀による共同所持と譲受け未遂とは、本件覚せい剤という同一の覚せい剤に関する一連の事実関係であり、被告人の立場からみて両立しない社会的事実であって、一罪と評価すれば足りる場合であるとみるのが相当であって、公訴事実の同一性の範囲内のものであり、しかも、その予備的訴因の点からみても、譲渡人であるA及び情を知らない本件覚せい剤入りの封筒を保管し被告人に渡さなかったB子の前記各原審証言の信用性が被告人側の防御にとって重要であり、この点をめぐっては十分な攻撃防御が尽くされているといえる。したがって、当裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び当裁判所において取り調べた証拠によって、直ちに判決することができるものと認められるので、刑訴法四〇〇条ただし書により、検察官から予備的に追加された訴因について、次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

被告人は、みだりに平成六年二月二六日ころ広島県福山市《番地略》所在の被告人の事務所においてAから乙山釣具店発送名義によりフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤結晶粉末約八・〇六七グラム(当審平成七年押第一九号の1はその鑑定残量)を速達郵便で配達を受け、譲り受けようとしたが、情を知らない妻B子がこれを受け取り警察に届け出たため、その目的を遂げなかったものである。

(証拠の標目)《略》

(累犯前科)

被告人は、(1)平成二年六月一四日広島地方裁判所福山支部で覚せい剤取締法違反の罪により懲役一年二月(四年間執行猶予付保護観察、同年一〇月一五日右執行猶予取消決定)に処せられ、平成五年四月二六日右刑の執行を受け終わり、(2)その間の平成二年九月二七日同支部で同法違反の罪により懲役一年六月に処せられ、平成四年二月二六日右刑の執行を受け終わったものであって、右事実は、前科調書及び右各該当の判決書謄本によってこれを認める。

(法令の適用)

被告人の判示所為は、覚せい剤取締法四一条の二第三項、一項に該当するところ、被告人には前記累犯前科があるので、平成七年法律第九一号による改正前の刑法五六条一項、五七条により再犯の加重をした刑期の範囲内で、本件事案の罪質、態様、被告人の前科関係、ことに被告人は前記累犯前科を含めた多数の前科があり、平成五年四月二六日最終刑の執行を受け終わったのであるから、十分自戒して更生の努力を続けるべきであったのに、又しても累犯前科と同種の本件犯行に及んだものであって、被告人には覚せい剤への親和性及び法規範軽視の性向が顕著に認められ、その刑事責任は軽視することができないところ、幸い本件覚せい剤については被告人の手に渡らなかったことと、被告人は本件により相当長期間にわたり身柄を拘束されていること、その他記録上認められる被告人のために酌むべき情状をも十分勘案して、被告人を懲役一年一〇月に処し、同法二一条を適用して、原審における未決勾留日数中右刑期に満つるまでの分をその刑に算入し、押収してある覚せい剤結晶粉末一袋(当審平成七年押第一九号の1)は、判示罪に係る覚せい剤で、被告人が所有するものであるから、覚せい剤取締法四一条の八第一項本文によりこれを没収し、原審及び当審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 荒木恒平 裁判官 松野 勉 裁判官 山本哲一)

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